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味わう喜びを 寝たきり患者に“おいしい”流動食 乳業メーカー開発、現場も評価(産経新聞)

 高齢や脳の病気による意識障害で寝たきりになり、口からの栄養摂取ができなくなった患者にも味わう喜びを感じてもらおうと、味や風味のある流動食を乳業メーカーが開発した。食道や胃に直接入れても、呼気などで風味を感じるといい、医師も「おいしさは治療にも重要な要素」と歓迎している。開発担当者の「意識がない患者でも味は感じているはず」という思いが、医療現場や患者の家族にも受け入れられるなど好評で、今年6月から味のあるタイプへの切り替えに乗り出す。

 この流動食を開発、販売しているのは森永乳業グループ。これまでの流動食は、使用する患者の免疫が比較的弱く、長時間にわたって袋ごと加熱滅菌する「レトルト殺菌法」で作られていた。しかし、食材が変色し、味や風味が損なわれるという欠点があった。

 開発を担当した森永乳業栄養科学研究所の武田安弘さん(47)は、流動食を利用する患者の顔に表情が感じられないことが気になっていた。「げっぷをして、呼気が逆流することで食べているものの味や風味はある程度分かる」と考え、平成15年ごろから味のある流動食の開発に取り組みはじめた。

 食材を高温で瞬間的に殺菌し、さらに別に殺菌した容器に無菌状態の中で充填(じゅうてん)する方法を採用。これにより安全性を確保したまま、ヨーグルト味や、アズキの甘みなどの風味を残すことに成功した。

 昨年夏に一部販売を開始してから売れ行きは好調で、同社の流動食の出荷量の3分の2が味のある流動食になった。

 医療現場でも高い評価を得ている。嚥下(えんげ)障害に詳しい九州大学病院の梅崎俊郎講師は「流動食とはいえ、おいしく感じるというのは非常に大事なこと。おいしいと思うものを食べることで無意識に飲み込むという意欲が高まる。食べ物が誤って気道に入ることも防ぐことができ、結果として肺炎も起こりにくくなる。より広く使われるようになることは大歓迎」と話す。

 流動食の開発に医師として助言してきた大阪市立総合医療センターの西口幸雄・消化器センター部長は「従来のものと比べても殺菌効果が高く、安心できる」としており、同センターでもすでに試験的に使用しているが、現場の看護師からの評判もいいという。

 こうしたことから、森永乳業グループは今年6月からはすべて新しい味のあるタイプの流動食を採用するよう病院などに要請、1年以内での完全切り替えを目指すという。

 販売を担当している森永乳業グループ病態栄養部門の専門会社「クリニコ」(東京)の中島靖・企画情報部長は「患者や家族のことを考えれば、おいしいものを使ってもらう方がいい。要請には応じてもらえるはず」と話している。

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